seaboseの公言

seaboseと申します。不貞腐れた初老怪獣っす。後は内緒。

12年


12年か。早いものだよ。幼稚園児が中学生になってしまう時間が、あの日から過ぎたのだなあ。

 

この日になると、見返す連続ツイがある。「三匹目のぶた」として。あの日の自分の自分の気持ちをアドエスから打ち出してメール投稿したものだ。
https://twilog.org/seabose/date-110404


で、実はこの時、もう一つ、連ツイで投稿しようとした一文があって。
でも逡巡した挙句没にした。理由は、当時公開するには不謹慎すぎると思ったから。

その判断が適切だったかわからない。碌なフォロワー数でも無いくせに、いっちょ前に”炎上”を恐れていたんだと思う。非公開ブログに貼り付けて眠っていたのを、

今日ここに公開する。今読み返してもやっぱ不謹慎かな。

でもあの日あの時感じた気持ちなんだ。それは間違いない事なんだ。

タイトルは「現実がフィクションを破壊する」。

以下引用、文は当時のままだが、動画リンクが切れていたので新しく探して貼り直した、

 

つぶやこうかと思ったがやっぱ不謹慎が過ぎると思ったので
こっちでこっそり。


何年か前、「滅亡映画ブーム」があったと思うんだ。
アルマゲドン」とか「ディープ・インパクト」とか最近だと「2012」とか。


そういうのって大抵「大津波」の場面がある。
画面を埋め尽くさんばかりの高波がビルや町を呑み込んでゆく。
クライマックスにぴったりの大見せ場。


映画館で見た大津波は青く綺麗でそのままサーフィンとかできそうで
一度ザッパンといってしまえばそこで終わってくれて、
劇中時間でも1分くらいのイベントでしかなかった。


それが・・・・・・3月11日の・・・あれは・・・なんだ。
https://www.youtube.com/watch?v=0E2Q7kr4L2c

 


最初はちょろちょろ、
でも防波堤を越え、
道にあふれ、
車を押し流し、
家を押し潰し、

もうやめてくれつってんのに、
ぜんぜん止まんなくて、
そのくせノロマで、
きったねえ茶色の、
ただの泥水で、

もう引けつってんのに、
瓦礫を巻き込んで、
ブルドーザーみてぇに、
田畑の中まで入り込んで、

ただ理不尽で、
ひたすら無慈悲で。


あれの後は、あれを見ちゃうと、映画の津波とか、見てらんない。
不謹慎とか、トラウマとか、そういうんじゃない。


だせえ、ふつーに陳腐だ。


現実がフィクションを破壊しちまったんだ。

 


核戦争後の世界。ビルが廃墟と化した砂漠で、
わずかに生き残った人々がボロをまとって細々と暮らしている。
不足するのは水と食料、ようやく入手した希望の種モミを、
モヒカンのならず者たちがヒャッハーと略奪に来る、みたいな。


冷戦時代の大国間の核戦争が引き金で、
世界中で国家体制が維持できなくなった後に築かれる、
出直し社会のファンタジー


・・・でも結局それは起きなかった。


起きたのは原子力発電所の大爆発。
スリーマイル、チェルノブイリ
そしてfukushimaと3度も起きた。3度も。


人類を襲った核の炎は、戦争ではなく原発だった。


「20XX年、核戦争によって人類の半分以上が死滅し・・・」
という枕詞で始まる物語。


は?・・・ねーよ馬鹿。もう見てらんない。


だって今自分たちの世界で本番が現在進行形なんだもの。


廃墟も砂漠もモヒカンも来なかった。


それまでと変わらぬ町の景色に

青い空、

白い雲、

緑の木々、
風にそよぐ田畑。

まったく同じ、

いつもと同じ、

以前と同じ。

ただ一つ、


人を拒絶するほどの放射線があたりに満ちている事を除けば。


現実がフィクションを破壊しちまったんだ。


連日TVが伝えてくる「現実」は私がぼんやり抱いていた
「核で滅びる物語」の幻想を粉砕してしまった。


核が使われてそれまでの世界を抑圧や不満ごと吹き飛ばしてくれる?
すべてがリセットされた新世界で自由な暮らしを踏み出せる?
・・・世迷い言もたいがいにせえよ。


「本番」はどうだ?だらだらと、ただだらだらと垂れ流される
放射性物質に蝕まれる世界があるだけ。
「気の遠くなる時間」以外に僕たちにそれをどうにかする術はない。
ぜんぜんスカッとしない。


カタストロフィが、変革と自由をもたらす!
とか言うぬるま湯妄想にとりつかれていた私に突きつけられた、
息の詰まるような、長くつまんねえ終わりのはじまり。

seabose (id:seabose) 11年前

 

 

12年前に感じた気持ちは、今でも私の心に残っている。
そして時折ひょいと顔を出す。
いや、違うな。

ずーっとそこにあったのにただ見ないふりをしていただけなのだ。
だってあの日あの時からの12年を私はずっと生きてきたのだから。

 

 

特別お題「今だから話せること